カウンセリング
セルフ・コンパッション(Self-Compassion)
セルフ・コンパッション(Self-Compassion)は日本語に訳すと「自分への慈悲、あるいは優しさ」と訳されることが多いです。これは厳しい状況や失敗した状況に対して、自分を過度に責めることなく、自分に対して思い思いやりを持って接していく態度を示します。この考えは、心理学者のクリスティン・ネフ(Kristin Neff)によって構築されたものです。今まで身近な人から批判され続けてきた、他者と比較されるという体験が多い、家族機能不全の中で育ってきたなどといったことによる自責感や罪悪感の強い性格傾向をもつようになることがあります。こうした方にはぜひ取り組んでもらいたい心理療法であると思っています。
セルフコンパッションには大きく3つの要素が提示されています
1 マインドフルネス(Mindfulness)
不安は将来のことに意識がうつりがちです。一方、トラウマや不全感といったものは、過去からの影響によるものです。こうしたことによって、反すうや不快な記憶の固定化が生じます。ここでは過去や将来に対して後に反応するのではなく、今に認識を向けてありのままの状態を持つと言うことになります。エクササイズとしては、瞑想やヨガが一般的ですが、ウォーキング(水中を含む)や食べるエクササイズ、掃除などもマインドフルネスといえます。自分のライフスタイルに合った方法を取るのが良いかと思います。
2 自分への優しさ(Self-Kindness)
自分への優しさとは、自分を責めたり否定したりと言うものではなく他者にたいしていたわりを持つように、自分にせっしていくと言うことになります。
エクササイズとしては、自分をケアしていく方法を検討する。(日記を書く料理をする犬を撫でる、マッサージに行くなど)、あなたが笑顔になるような人物や、生き物を思い浮かべていくようなこと、自分自身に対しての優しい言葉かけ、同様に他者に対していたわるような心がけ、さらには自分が希望しているような状態に対しての意識づけ、さらにはタッチを加えた身体感覚に意識を向けながらエクササイズをしていく場合もあります。自己批判をすることが習慣になっている場合には、自己批判の声を特定していくというものもあります。この場合にこうした特定の言葉かけをした場合に、どのような反応が起こるかを記録していきます。またこうした否定的な言葉がなぜこのように長く続いているのかを検証してみることも重要です。何か身体的な反応が起こっている可能性がありますので、こうしたことを特定できれば今後の生活に活かすことができます。一方注意しておかないといけないのは、批判的な声と言うものも、それ自身はご自身を助けようと言う意味合いを持っている可能性が高いのです。ですからこういったことも全面的に否定するのではなく、機能の一つとして、慈しみを持って接していくことも大切です。
3 共通の人間性(Common Humanity)
共通の人間性とは「こういったつらい思いは、多くの人が乗り越えてきたことだ」、「自分と同じような苦しさをもっている人は多くいる、決して自分だけではない」、「このようなことは昔から続いていることだ」といったように、これは自分だけの苦しみや孤独といったものではなく、人間として普遍的なものであるととらえることをいいます。例えば介護や子育ての場合に、このことについては他の人もいろいろなことに悩み、ストレスを感じているというふうに考えれば、具体的な方法を検討する(誰かに手伝ってもらう、社会的な支援を求める、自分の苦しんでいることにいたわりをもって接する)ことができるようになります。感情、例えば怒りについても否定的なものではなく自然なものだと理解すれば今までとは違い、落ち着いて対応することができるようになるかもしれません。