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フラッシュテクニックの有効性はポジティブ感情の拡大形成理論によって説明される

フラッシュテクニックの有効性はポジティブ感情の拡大形成理論によって説明される

 

The Effectiveness of the Flash Technique Is Explained by the Broaden-and-Build Theory of Positive Emotion Perez-Strumolo, Lysandra

Journal of EMDR Practice and Research, Volume 18, Number 3, 2024 The Role of Positive Emotion in the Flash Technique

オープンソース

 

フラッシュテクニック(Flash Technique:以下F T)はまだ新しい心理療法なので、その有効性への研究はあまり多くはありません。ベースがEMDRであることから適応情報処理(AIP)で説明できるところもあります。AIPモデルでは(1)人間の脳は辛い体験があったとしても、それを自然に回復していけるようになっていること(2)しかし心的外傷のような強い出来事が生じると、自然な回復プロセスに至らず、その記憶が統合的に処理されず、孤立した形で固定化されてしまうこと(3)眼球運動や両側性刺激によって固定化された記憶にアクセスし、その記憶を活性化させ再処理することとなります。

FTも同様のモデルになりますが、この論文では拡大形成理論(Broaden-and-Build Theory: Barbara L. Fredricson) )が重要であると指摘しています。これはポジティブ心理学の一つになります。ポジティブ感情からの拡大としては

 

愛情:親密さ、協力、助け合いを促進します

喜び:遊び心、創造性

満足:感謝、経験の統合

誇り:自己効力感の向上

興味:探究心、学習意欲向上

 

構築としては

ストレスや困難に直面した際の回復力(レジリエンス)を高める

良質な人間関係の構築や深化

思考や行動の拡大によって、新しいスキルや知識の向上

 

などが考えられます。

 

FTの応用

FTのセッション中は多くの時間を楽しく有意義な時間PEF(Positive Engagement Focus)を意識化します。不快な場面を意識するのは苦痛度(SUDs)を報告してもらうくらいで、詳細を確認することはありません。この論文ではトラウマ記憶を想起した直後にクライエントがポジティブな感情を経験することでその記憶が促進されるとしています。またこのことにより対象となる記憶がワーキングメモリーに入り込み、扁桃体の活性化リスクを軽減します。ワーキングメモリーに格納された直後にPEFに取り組むことで自発的に解消効果が生じ、適応的な再処理を促進するとあります。

FTでは苦痛な記憶とPEFを並置することで予測誤差を生み出し、こうしたプロセスによって認知の柔軟性を高め適応的な解決を促進すると考えられます。

Manfield、Wong、Foreman-Patelらの研究によると瞬きによってクライエントのPEFを中断させてトラウマ記憶に非常に短い時間ではあるが注意をうながす機会をあたえるとしていますが、その裏付けはいたっていません。しかしポジティブ感情との関わりの結果として適応的な記憶への再統合できるという主張は妥当とも考えられます。

いずれにしても、この論文ではFTによるポジティブ感情の想起とトラウマ記憶との間で矛盾を生じされることにより(予測誤差)、ネガティブ感情が打ち消されるあるいは中和され、その結果上昇スパイラルが生じ、記憶が再処理されると想定しています。

 

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