ソマティック・エクスペリエンシング™︎
人前で顔が赤くなる、声が震えるのはなぜ?自律神経から紐解く「人見知り」の正体と、身体から進める癒やしのプロセス
人前で顔が赤くなること。
大切な場面で、声が震えて想いが言葉にならないこと。
それらの反応が起きるたび、あなたは自分を責め、情けなさを感じてこられたかもしれません。「どうして自分はこんなに弱いのだろう」「もっと強くならなければ」と。
しかし、どうか知ってください。
それは決して、あなたの心が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
あなたが今日まで懸命に生き抜いてくるために、あなたの身体が、あなたの自律神経が、必死にあなたを守ろうとしてきた「生命としての賢明な防衛本能」の現れなのです。
ソマティック・エクスペリエンシング(SE)という身体心理療法の視点から、その震えの奥に眠る人見知りの正体を静かに紐解き、身体の内側から進んでいく癒やしのプロセスについて、より深く分かち合いたいと思います。
凍りついた神経系が解けるとき
私たちは、周囲の環境や他者の視線を「安全ではない」と無意識に察知したとき、自律神経が自動的にサバイバルモードに入ります。これは脳の原始的な部分が司る反応であり、私たちの理性や意志をはるかに超えたスピードで起こります。
赤面や声の震えは、あなたの意志の弱さの証明ではありません。内側で「戦うか、逃げるか」のために高まった膨大なエネルギーが行き場を失い、身体の末端から溢れ出しているサインです。
「落ち着かなければ」と思えば思うほど、体はさらに緊張を強めてしまいます。それは、頭という思考の領域だけで解決しようとするには、神経系の反応があまりに素早く、本能的なものだからです。むしろ、止めようと努力することが、身体にとってはさらなる「脅威」となり、緊張のループを加速させてしまうことさえあるのです。
なぜ身体からのアプローチが必要なのか
これまでのカウンセリングや自己啓発で、「考え方を変えよう」と試みてこられた方も多いでしょう。もちろんそれも大切ですが、神経系に深く刻まれた恐怖のパターンは、言葉や理論だけでは届かない場所にあります。
トラウマや過度な緊張は、出来事そのものにあるのではなく、その時に処理しきれなかった「エネルギー」として神経系の中に閉じ込められています。ソマティック・エクスペリエンシングでは、この閉じ込められたエネルギーを、思考ではなく「身体感覚(フェルト・センス)」を通じて、安全に解放していくことを目指します。
身体の声に耳を澄ますプロセス
ソマティック・エクスペリエンシングのセッションでは、無理に緊張を抑え込んだり、無理やり場数に慣れさせたりするような、いわゆる「暴露療法」的なアプローチはいたしません。凍てついた川が、春の穏やかな日差しを浴びてゆっくりと溶け出すように、あなたの身体のペースを何よりも尊重しながら進めていきます。
リソース:安心の拠点を育む
まず、今のあなたの身体の中に残っている、ほんのわずかな「落ち着き」や「心地よさ」に意識を向けます。それは、足の裏が地面に触れている確かな感覚かもしれません。あるいは、お気に入りの飲み物を飲んだ時の喉の感覚、椅子の背もたれに預けている背中の感覚かもしれません。
こうした「リソース」と呼ばれる安心の資源を丁寧に見つけることから始めます。荒波に揉まれるのではなく、まずは岸辺にしっかりと足をつける感覚を育むのです。
タイトレーション:滴り落ちるしずくのような変化
次に、緊張という大きな波に一度に飲み込まれないよう、ほんの少しずつ、その感覚に触れては安心な感覚に戻る、という往復を繰り返します。これを「タイトレーション(滴定)」と呼びます。
化学実験で強力な薬液を一滴ずつ慎重に落とすように、神経系が圧倒されずに処理できる範囲で、少しずつ緊張を解いていきます。この「少しずつ」というステップが、神経系にとっては最大の安全策となります。
振るえの完了とエネルギーの解放
そして、セッションの中で震えや熱さが湧き上がってきたとき、それを「止めるべき悪いもの」として排除するのではなく、「完了したがっているエネルギー」として優しく見守ります。
もし身体が震えたいのであれば、その微細な動きを許容します。身体が自然と震えを終えることができたとき、神経系は「あぁ、もう戦わなくても、逃げなくても大丈夫なんだ。私は今、安全な場所にいるんだ」という深い安堵感を、概念ではなく、身体の細胞レベルで学び直していきます。
震えの向こう側にある、新しいつながり
癒やしのプロセスが進むにつれ、人前で感じる「脅威」は、少しずつ「関わり」や「好奇心」へと変容していきます。
たとえ赤面や震えが起きたとしても、それを自分を壊す敵ではなく、「私の身体が一生懸命に自分を支えようとしている、健気な生命の鼓動」として、慈しみを持って受け止められるようになります。そのとき、あなたの神経系には新しい余裕(キャパシティ)が生まれます。
余裕が生まれると、あなたの声は自然と本来の深みと響きを取り戻し、無理に自分を飾ることなく、ありのままの姿で周囲との穏やかなつながりを感じられるようになるでしょう。
あなたの身体が、何年も、何十年もあなたを必死に守り続けてくれたその扉を、痛みではなく優しさを持って、そっと開いていくお手伝いをさせてください。