ソマティック・エクスペリエンシング™︎
対人恐怖を「体」から紐解く:ソマティック・エクスペリエンシング®による回復プロセス
「人の視線が怖い」「人前に出ると体がすくむ」 こうした対人恐怖は、単なる性格の問題ではなく、自律神経系が「過覚醒(サバイバルモード)」に陥っている状態と言えます。
従来の認知行動療法に加え、近年注目されているソマティック・エクスペリエンシング®(SE™)では、思考(頭)ではなく身体感覚(体)にアプローチし、神経系の再構築を目指します。ここでは、SE™における具体的なプロセスをご紹介します。
1. リソース構築:安心の土台作り
いきなり恐怖の対象(対人場面)を扱うことはしません。まずは、今の自分が「安全である」と感じられる身体感覚(リソース)を見つけていきます。
足が地についている感覚(グラウンディング)
呼吸が少し深くなる瞬間
心地よいと感じる色や音
2. タイトレーション(滴定):微量ずつ触れる
SE™の最大の特徴は、トラウマ反応を「ごくわずかずつ」扱うことです。対人恐怖の場面を100%思い出すのではなく、1%や5%といった、体が圧倒されない程度の微細な緊張から観察を始めます。
3. イメージエクスポージャーと身体感覚の統合
従来のイメージエクスポージャー(想像曝露)では、恐怖に慣れるまで耐える手法が一般的ですが、SE™ではここに身体のレジリエンス(回復力)を掛け合わせます。
イメージの活用: 苦手な相手や場面を「安全な距離」からイメージします。
フェルトセンスの観察: その時、胸のつかえや喉の締まりなど、体に何が起きているかに意識を向けます。
振り子運動(ペンデュレーション): 緊張を感じたら、一旦リソース(安心感)に戻り、再び緊張に触れる。この「行き来」を繰り返すことで、神経系の許容容量を広げていきます。
4. 「制止学習」を促す新しい身体体験
最新の心理療法で重要視される制止学習(Inhibitory Learning)。これは「怖いことが起きなかった」という記憶を上書きするのではなく、「怖くても自分は安全に対処できた」という新しい学習を脳に定着させるプロセスです。
SE™では、イメージの中で「言いたかったことを言う」「その場を離れる」といった完了できなかった防御反応を身体的に完了させます。これにより、脳が「もう守らなくて大丈夫だ」と判断し、対人場面での過剰な警戒心が自然と解けていくのです。
なぜSE™が対人恐怖に効果的なのか?
対人恐怖を抱える方の多くは、「落ち着かなければ」と焦るほど、体が強張る悪循環に陥っています。 SE™は、言葉での理解を超えて、「私の体は今、安全だ」という実感を神経系に直接届けます。
思考のループから抜け出せる
「戦うか逃げるか」のスイッチを自分でコントロールできるようになる
人とのつながりに「安心感」を見出せるようになる
セッションをご希望の方へ
対人恐怖の克服は、筋トレのように少しずつ神経系を鍛えていくプロセスです。あなたのペースを何よりも大切にしながら、共に歩んでいきましょう。
キーワード解説
ソマティック・エクスペリエンシング®: ピーター・リヴァイン博士が開発した、身体感覚を通じたトラウマ療法。
制止学習: 「恐怖反応」を抑制する新しい回路を脳に作る学習プロセス。