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ソマティック・エクスペリエンシング™︎

ソマティック・エクスペリエンス(SE)の有効性と主要因に関する詳細要約

Somatic experiencing – effectiveness and key factors of a body-oriented trauma therapy: a scoping literature review

ソマティック・エクスペリエンス(SE)は構造化されていないので、自由度が高いゆえにエビデンスとなると難しいセラピーですが、さまざまな研究の効果をまとめたものがありましたので紹介します。

トラウマ治療の現状とボトムアップ・アプローチの台頭
トラウマ体験は、人間の精神的および身体的な許容能力の限界を押し広げ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの深刻な疾患を引き起こす要因となります 。PTSDは、トラウマに関連する侵入症状、回避、そして持続的な生理的過覚醒という3つの主要な症状グループに分類されます 。この疾患は自然寛解率が低く、他の精神疾患を併発するリスクも高いことが知られており、効果的な介入方法の特定が急務となっています 。

これまでのトラウマ治療は、認知行動療法(CBT)や曝露療法といった、認知や情動の処理を介してアプローチする「トップダウン」の介入が主流でした 。これらの手法は一定の成果を上げているものの、強い負の感情に支配されている患者は認知機能が低下している場合があり、言語ベースの治療が十分に機能しないケースも存在します 。また、曝露療法はその侵襲性の高さから、治療の脱落率が高いことも課題とされてきました 。

こうした状況を背景に、過去10年間で「ボトムアップ」アプローチへの関心が高まりました 。これは、脳幹や辺縁系といった皮質下レベルの脳領域、すなわち「身体の記憶」に焦点を当て、身体がトラウマに反応する方法を直接変えることを目的としています 。

ソマティック・エクスペリエンス(SE)の理論的基盤
ソマティック・エクスペリエンス(SE)は、こうしたボトムアップ・アプローチの中でも特に有望な治療法の一つです 。SEの核心は、トラウマによって引き起こされた慢性的なストレスや神経系の不全調節を解消することにあります 。

SEのモデルによれば、トラウマ症状は、圧倒的な出来事に遭遇した際に、生来のストレスシステムが過剰反応し、本来完了すべきだった防御反応(戦うか逃げるか)が完了できずに凍結状態に陥ることで生じます 。これが神経系の持続的な調節不全を招き、慢性的なストレス反応として定着してしまいます 。

SEの主要な戦略は、クライアントの注意を認知や情動ではなく、内臓感覚(内受容)や筋肉・骨格系の感覚(固有受容)へと向けさせることです 。クライアントは、自身の内部で起きている微細な身体感覚を徐々に許容し、受け入れていくトレーニングを受けます 。この過程で、トラウマに関連したエネルギーが「排出(discharge)」され、神経系のバランスが回復するとされています 。曝露療法とは異なり、トラウマ体験の全容を再体験する必要はなく、過度な覚醒を避けながら極めて段階的にアプローチするのが特徴です 。

研究方法と分析対象
本レビューは、SEに関する初期のエビデンスを包括的に把握するために「スコーピング・レビュー」の手法を用いて実施されました 。研究チームは、2020年8月13日までに公開された査読付き論文や博士論文などを対象に、複数のデータベースを用いて調査を行いました 。

特定された83件の記事のうち、基準を満たした16件の研究が分析されました 。これらの研究には、PTSD患者、自然災害の生存者、慢性的な痛みを抱える人々、SEトレーニングの受講者など、多岐にわたるサンプルが含まれていました 。定量的研究10件と定性的研究6件に分類され、それぞれの視点からSEの有効性と成功要因が評価されました 。

SEの有効性に関する定量的評価
分析された定量的研究の多くは、SEがPTSD症状の軽減に寄与することを支持しています 。

PTSD症状への効果 4つの研究がSEのPTSD症状への影響を調査し、すべてにおいて肯定的な結果が得られました 。特に、イスラエルで行われたランダム化比較試験(RCT)では、対照群と比較して非常に大きな改善効果(Cohen’s d = 1.26)が報告されています 。また、デンマークの研究でも、慢性腰痛とPTSDを併存する患者に対し、SE群のみに有意な症状の改善が認められました 。

広範な症状への波及効果 SEはトラウマそのものの症状だけでなく、付随する精神的・身体的症状にもプラスの影響を与えます 。

抑うつと不安:複数の研究で、SE介入後に抑うつや不安症状の有意な減少が示されました 。

痛みと身体症状:慢性腰痛患者における運動恐怖症の軽減や、身体症状尺度(PHQ-SADS)の改善が確認されています 。

レジリエンスとQOL:トランスジェンダーの人々を対象とした研究やSEトレーニング受講者の調査では、心理的・社会的な生活の質(QOL)の向上が報告されました 。

災害支援における短期的介入 タイやインドの津波生存者、および米国のハリケーン被災者を対象とした研究では、1回から数回という極めて短期間のSE介入であっても、多くの被験者においてトラウマ症状の軽減が維持されていることが示されました 。これは、SEが緊急時やリソースの限られた環境下でも適用可能な、文化を超えた汎用性を持っていることを示唆しています 。

治療の成功を左右するメソッド固有の主要要因
定性的分析の結果、実務家とクライアントが共通して重要視しているSE固有の要因が特定されました 。

リソースの構築と活用 SEにおいて「リソース」とは、個人の安全感や強さを支える内的・外的な要素を指します 。実践者とクライアントの双方が、リソースの構築が治療の成功に不可欠であると指摘しています 。特に、自分の身体そのものをリソースとして感じ、自己調節やリラックスができるようになることが、トラウマ体験に取り組むための前提条件となります 。

タッチ(身体的接触)の使用 身体指向アプローチであるSEの大きな特徴は、セラピストによる「タッチ」の使用です 。肩に手を置くなどの穏やかな接触は、クライアントに安全感を与え、治療効果を高めるサポーターとして機能します 。多くの実践者が、タッチを取り入れることで、従来の言語のみの治療では到達できない生理的なレベルでの変容が可能になると述べています 。

生理学的概念化と心理教育 トラウマが神経系にどのように保存され、なぜ身体的な反応として現れるのかを説明する「心理教育」も重要です 。クライアントが自分の症状を「意志の弱さ」ではなく「神経系の生存メカニズム」として理解することで、自己非難が減り、身体への信頼が回復します 。

研究の限界と今後の課題
本レビューはSEの有望性を示していますが、同時に現時点での研究の限界も浮き彫りにしています 。

第一に、科学的に厳格なランダム化比較試験(RCT)がまだ不足しており、多くの研究が小規模であるか、対照群を欠いています 。第二に、研究ごとに使用される指標や介入の期間(1回から15回まで)がバラバラであり、統合的な分析が困難な面があります 。また、一部の研究では自作の質問票が使用されており、標準化された尺度による検証が求められます 。

今後は、標準化された治療マニュアルの整備や、より大規模でバイアスの少ないRCTの実施が必要です 。また、SEが他の心理療法(ゲシュタルト療法など)とどのように統合され、相乗効果を生み出すのかについても、さらなる研究が期待されます 。
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総論
ソマティック・エクスペリエンス(SE)は、従来の認知的なトップダウン・アプローチを補完し、あるいはそれが困難なケースに対して有効な選択肢となり得る「ボトムアップ」の身体指向療法です 。本レビューによれば、SEはPTSD症状、併存する抑うつや不安、さらには慢性的な痛みや生活の質の改善において、一貫して有望な結果を示しています 。

特に、身体の内部感覚を微細に調整し、安全感を基盤としたリソースの活用や、適切なタッチの介入は、トラウマ治療の新たなスタンダードとなり得る要素を含んでいます 。エビデンスの質を向上させるための継続的な研究は必要ですが、SEが持つ高い汎用性と臨床的な魅力は、今後のトラウマ治療の分野においてますます重要な役割を果たすと考えられます 。

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