ソマティック・エクスペリエンシング™︎
【解説1】ソマティック・エクスペリエンシング™︎とは何か ―トラウマを“身体”から癒す心理療法の全貌―(E-Lifeカウンセリングセンター)
―トラウマを“身体”から癒す心理療法の全貌―(E-Lifeカウンセリングセンター)
■ はじめに:なぜいま“身体を使う心理療法”が必要なのか
ここ数年、メンタルヘルスの領域では「身体感覚を活かす心理療法」が強く注目されるようになりました。
その背景には、以下のような社会的変化があります。
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不登校・仕事のストレス・家庭問題・人間関係トラブルなどにより、心身の不調を抱える人の増加
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睡眠障害や不安症、慢性疲労など「理由のはっきりしない不調」を訴える人の増加
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過去の経験が体に残り、急な不安・緊張・涙・動悸としてあふれ出すケースの増加
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リモートワークや孤立による“セルフケア不足”の加速
こうした背景から、「考え方」だけを変えるアプローチ(例:認知行動療法)だけでは改善しないケースが注目されるようになり、
身体と脳の両方にアプローチする“ソマティック(身体的)な心理療法” が世界的に広がっています。
その中でも特にエビデンスが蓄積され始め、臨床現場での成功例も多いのが、今回紹介する
ソマティック・エクスペリエンシング™︎(Somatic Experiencing:SE)
です。
この記事では、専門家としての視点から、SEがどのように働くのか、どんな悩みに向いているのか、セッションでは何をするのかを、一般の方でも分かる形で丁寧に説明します。
■ 第1章 ソマティック・エクスペリエンシングとは
ソマティック・エクスペリエンシング(以下SE)は、アメリカの医学博士ピーター・A・リヴァイン氏によって開発された心理療法です。
最大の特徴は、
「トラウマは記憶ではなく、身体に残る緊張として蓄積される」
という考え方です。
通常、“トラウマ”と聞くと多くの人が「怖い記憶」「忘れられない出来事」を思い浮かべます。
しかしSEは、「トラウマは記憶よりも“身体反応”に刻まれる」という前提でアプローチします。
たとえば…
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過去の体験を思い出していないのに、突然動悸が始まる
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考え事をしていなくても、急に体が固まり息が浅くなる
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朝起きようとすると体が重く、学校や仕事に行けない
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苦手な人の声を聞くだけで体が緊張する
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疲れが抜けず、気力が湧かない
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パニックのような症状が突然起きる
こうした反応の多くは、「記憶」ではなく 神経系の過覚醒 が原因となっていることがあります。
SEは、この“過度に緊張した身体と神経のパターン”を丁寧にゆるめ、
「からだが安全だと感じられる状態」へ戻すことを目的にしたアプローチ です。
■ 第2章 SEで扱える主な悩み・症状
SEは幅広い悩みに適応できますが、特に効果が期待されるのは以下のようなケースです。
● ① 過去のトラウマ体験
交通事故、ケガ、手術、突然の別れ、災害、学校での出来事、家庭内の緊張体験など。
「思い出していないのに、身体が反応してしまう」ケースでは、SEの身体アプローチが非常に有効です。
● ② 不安症・パニック症状
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電車に乗ると息苦しい
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人前で緊張しすぎてしまう
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体の緊張が抜けず、疲れやすい
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不安が体に出る(動悸・震え・息切れなど)
考え方につながる“心理的な不安”だけではなく、
自律神経のパターンを整えることで改善が期待できます。
● ③ 慢性ストレス・疲労
ストレスが長期間続くと、身体は常に“戦う/逃げる/固まる”反応のまま固着しやすくなります。
SEはこの持続した緊張を解放し、自然な回復力を取り戻す助けとなります。
● ④ 不登校・朝起きられない・行く直前に体調が悪くなる
小中学生によく見られる症状です。
「怠けではないのに体が動かない」
「起きると頭痛や腹痛が出る」
「学校に行こうとすると急に疲れる」
こうした場合、“心”ではなく 神経系の防衛反応 が関係していることが多くあります。
SEは非常にやさしく、安全にアプローチできるため、子どもにも向いています。
● ⑤ 身体症状を伴うケース
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肩や首の慢性的な緊張
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吐き気・胸のつかえ
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聴覚過敏
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慢性的な浅い呼吸
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緊張しすぎる
これらも多くの場合、身体の「防御モード」が解除されていない状態です。
■ 第3章 ソマティック・エクスペリエンシングのセッションはどのように進むのか
SEは非常に穏やかで、安全性を重視した心理療法です。
強い感情を無理に掘り返すことはなく、トラウマの核心に“急に触れる”ようなこともありません。
一般的なセッションの流れは次の通りです。
● ステップ1:現在の「安全感」を確かめる
まず、クライアントの体が安心できる状態を優先します。
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座る姿勢
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呼吸の状態
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足の感じ
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背中の支え
など、いま身体がどれほど落ち着いているかを一緒に確認します。
この段階から、体は少しずつ“戦闘モード”を離れ始めます。
● ステップ2:身体感覚に気づく(観察フェーズ)
次に、身体のどこに力が入っているか、どこが緩んでいるか、温度や重さ、圧力などの感覚を丁寧に見ていきます。
例:
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「胸のあたりが少し重い感じがします」
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「お腹が固まっている気がする」
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「背中の下の方が温かい」
この“気づく”という行為だけで、すでに自律神経には変化が起こり始めています。
● ステップ3:ゆっくり緊張をほどく
身体に溜まっていた“固まり”が、自然にほどけていく瞬間があります。
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無意識に深い呼吸が出る
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足先が温かくなる
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肩の力が抜ける
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まぶたが柔らかくなる
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背中が軽くなる
SEでは、この自然な回復のサインを大切にしながら進めます。
● ステップ4:トラウマ記憶に直接触れず、体の反応を整える
多くの心理療法では過去の出来事を「話す」ことが中心ですが、SEでは無理に話す必要はありません。
トラウマの核心に触れなくても、
体が安全を取り戻せば、心は自然と落ち着いていきます。
これはSEが「脳だけではなく“神経系全体”を変化させるアプローチ」である証拠です。
■ 第4章 オンラインでSEを行うメリット
E-Lifeカウンセリングセンターではオンラインでの心理療法を提供しています。
オンラインでSEを行うメリットは非常に大きく、クライアントからも次のような評価があります。
● ① 自宅で安心して受けられる
トラウマや不安を抱える人にとって、移動や初対面の場所は緊張を強めます。
オンラインなら 自宅という“最も落ち着ける場所” で受けられるため、効果が高まりやすくなります。
● ② 子どもでも取り組みやすい
不登校や登校しぶりの子どもは「初めての場所に行く」だけで大きな抵抗が生まれます。
オンラインなら、負担が少なく始めやすいメリットがあります。
● ③ 実生活の変化につながりやすい
SEが目指すのは“生活の中で身体が落ち着くこと”。
自宅で受ければ、セッション直後から「いつもの空間での感覚」を観察しやすいという利点があります。
■ 第5章 SEを受けるとどう変わっていくのか(よくある変化)
SEを数回受けた方の多くに見られる変化は以下のようなものです。
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深く息ができるようになった
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朝起きる時の体の重さが軽くなった
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不安が“波”として流れるようになった
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聴覚過敏がやわらぎ、学校に行ける日が増えた
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緊張で体が固まることが減った
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家の中で過ごす時間が楽になった
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勉強や仕事に集中しやすくなった
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気持ちが安定し、自分に優しくなれた
SEは急激な変化を起こすものではありません。
しかし、身体が“安全”を理解すると、日常の小さな変化から大きな改善につながっていきます。
■ 第6章 よくある質問(FAQ)
ここでは、SEを検討される方から頻繁に寄せられる質問をまとめました。
Q1. 過去の出来事を話さなければいけませんか?
→ いいえ、話す必要はありません。
SEは体の感覚を扱う療法なので、「話したくない」場合は無理に話す必要はありません。
Q2. 痛みや辛さが増すことはありますか?
→ 無理に深い記憶に触れないため、過度な負担はありません。
安全性を最優先に進めます。
Q3. 子どもでも受けられますか?
→ 可能です。
不登校や登校しぶりの子どもに特に適しています。
Q4. 何回くらいで変化がありますか?
→ 個人差がありますが、3〜5回で「呼吸が楽になった」「体の重さが減った」などの変化を感じる方が多いです。
■ 第7章 まとめ ― 身体がゆるむと、心は自然と変わる
ソマティック・エクスペリエンシング™︎は、
「体が固まる・緊張する・動けなくなる」といった状態の根本にアプローチする心理療法です。
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不安
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トラウマ
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こどもの登校困難
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慢性疲労
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聴覚過敏
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心身の不調
これらは“心の問題”に見えますが、
実は 神経系が過敏になっているだけ のことが多くあります。
SEは、その“過敏になった神経のブレーキ”をやさしく休めていくアプローチです。