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ブログ | 心の傷を癒す新しい選択肢。オンラインで手軽に。EMDRとフラッシュテクニック ソマティックエクスペリエンシング

EMDR

フラッシュテクニックから EMDR やソマティックエクスペリエンシング™ へ移行するケース

心理療法の現場では、ひとつの技法だけでトラウマの全てが片付くわけではありません。
トラウマの影響は人によって異なり、脳と身体の反応の仕方、症状の形、そして「その人がどれだけトラウマの記憶に耐えられるか(処理能力)」によって、適切なアプローチは変わってきます。

そのためセラピーは段階的に進みます。

  • 最初は 安全で刺激の少ない技法(フラッシュテクニック) を使って土台を整える

  • トラウマ記憶の強度が下がってきたら EMDRソマティックエクスペリエンシング™(SE) に移る

  • 必要に応じて、またフラッシュテクニックに戻ったり、別の方法と組み合わせたりする

ここでは、

  1. なぜフラッシュテクニックから始めるのか

  2. どのような場合に EMDR へ移行するのか

  3. どのような場合にソマティックエクスペリエンシング™へ移行するのか

  4. 移行する際に見られやすい心身の変化

  5. 移行が難しいケースと、その対応

  6. 実際のセラピーでよくあるプロセス例

を丁寧に説明します。

1. なぜ最初にフラッシュテクニックを使うのか

フラッシュテクニックは、トラウマ記憶に直接触れずに、しかも短時間で苦痛を軽くできる方法として知られています。
そのメリットは次の三つです。

① トラウマ記憶に“間接的”に触れるだけでよい

フラッシュテクニックは、記憶の詳細を語る必要がありません。
「タイトルだけ思い浮かべる」程度でも処理が進むため、フラッシュバックや感情の高ぶりが起こりにくいのです。

② セラピー初期でも安全に行える

以下のような方にも向いています。

  • 思い出すだけで涙が出る

  • 動悸や息苦しさが出る

  • 身体が強く緊張する

刺激量が少ないため、安定化の初期段階で使いやすい技法です。

③ フラッシュで負荷が下がると、次の技法に進みやすくなる

フラッシュは主に「苦痛そのものを軽くする」技法です。
ここで負荷が下がると EMDR や SE が安全に行えるようになります。

2. フラッシュテクニックから EMDR に移行するケース

どのようなときに EMDR へ進むのか、典型的なケースを紹介します。

ケース①:苦痛は下がったが“核心”の部分が残る

フラッシュで感情の強さは減っても、

  • 「自分は無力だ」

  • 「価値がない」

  • 「人を信用できない」

などの否定的な信念が残ることがあります。

EMDR は、記憶・感情・思考・身体反応を一体として再処理するため、
より深いレベルで意味の転換が起こります。

ケース②:複数の体験が絡み合っている

家庭環境・学校・人間関係など、複数のトラウマ体験が絡むと、
フラッシュだけでは整理しきれないことがあります。

EMDR は「記憶のネットワーク」全体を扱えるため、
複雑な背景を持つケースに向いています。

ケース③:心理学的な理解を望むタイプ

  • 自分の状態を理解したい

  • どこをどう治療しているのか知りたい

という方には、構造が明確な EMDR が安心感を持ちやすいです。

ケース④:PTSD の診断がある、あるいは疑われる場合

国際ガイドラインで EMDR は「PTSDの第一選択治療」です。
フラッシュで急性症状を抑えつつ、準備が整えば EMDR に移行するのは標準的な流れです。

3. フラッシュテクニックから SE(ソマティックエクスペリエンシング™)へ移行するケース

SE は身体反応・神経系の調整を丁寧に扱う技法で、次のようなケースで移行が行われます。

ケース①:記憶より“身体症状”がつらい場合

  • 身体がいつも緊張

  • 眠れない

  • 警戒が抜けない

  • 身体が固まる

フラッシュで感情の負荷が減っても、身体反応が続くケースでは SE が最適です。

ケース②:記憶を語ると解離しやすい、意識が飛びやすい

SE は「身体の微細な反応にゆっくり触れる」アプローチで、
解離しやすい方にも比較的安全に行える特徴があります。

ケース③:慢性ストレス・幼少期の慢性トラウマ(複雑性トラウマ)

慢性的なトラウマは身体に深く刻まれます。

  • 力が抜けない

  • 常に過覚醒

  • 感情が平坦

  • 休息しても回復しない

このような場合、神経系の調整を行う SE が必要になることがあります。

4. 移行時に見られやすい心身の変化

  • 記憶を思い出しても“圧倒されにくい”

  • 感情や身体の揺れを自分で調整できる

  • 未来や日常生活に目を向けられる

こうした変化は、次の治療段階に進めるサインです。

5. 移行が難しいケースと対応

移行が難しい場合には、再び安定化を優先します。

① 現在の生活ストレスが強い

深い処理より、フラッシュや安定化技法を優先。

② 解離が起きやすい

グラウンディングやリソース構築を行いながら慎重に進める。

③ 身体感覚に触れるのが怖い

SEの導入はゆっくりと進める必要があります。

6. よくあるプロセスの流れ(イメージしやすく)

  1. フラッシュテクニックで急性の苦痛を軽減する

  2. 日常が安定してくる

  3. 必要に応じて EMDR で核心の記憶を再処理する

  4. 身体に残る緊張があれば SE で統合する

  5. 未来への行動パターンや自己理解をサポートする

フラッシュ → EMDR/SE の移行は、回復の階段を丁寧に上っていく自然なプロセスです。


関連機関(公式)リンク一覧

以下は、フラッシュテクニック・EMDR・SE に関連する公式機関や、トラウマ治療の国際的な専門団体です。

■ EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

■ ソマティックエクスペリエンシング™(SE)

■ トラウマ研究の国際的機関

E-lifeカウンセリングセンター

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