認知行動療法
感情駆動行動(UP:統一プロトコル)について2
人は誰でも、感情によって行動が左右されることがあります。不安で外出を避けてしまったり、怒りに任せて強い言葉をぶつけてしまったり、落ち込みから何もできなくなったりする経験は、特別なものではありません。
統一プロトコル(Unified Protocol:UP)は、こうした「感情と行動の関係」に注目した心理療法です。その中でも重要な概念が「感情駆動行動」です。これは、不安症やうつ病、パニック障害、PTSD、強迫症など、さまざまな心理的困難に共通して見られる心の動きとして知られています。
感情駆動行動を理解することは、心の不調を抱える方だけでなく、自分の感情とうまく付き合いたいと考えるすべての人にとって役立ちます。
感情駆動行動とは何か
感情駆動行動とは、強い感情が引き金となり、ほとんど考える間もなく起こる行動のことを指します。冷静な判断よりも、感情の勢いが先に立って行動が選ばれる状態です。
たとえば、不安を感じた瞬間にその場を離れてしまう、恥ずかしさから発言を避ける、恐怖を感じて何度も確認を繰り返す、といった行動が挙げられます。これらはすべて、つらい感情を少しでも下げようとする自然な反応です。
統一プロトコルでは、こうした行動を「悪い癖」や「性格の問題」とは捉えません。むしろ、人が感情から自分を守ろうとする中で身につけた、ごく自然な対処法だと考えます。
なぜ感情に駆動される行動が起こるのか
人間の感情は、生き延びるための重要な仕組みとして発達してきました。危険を察知したとき、素早く行動できるようにするため、感情は即座に体と行動を動かします。
恐怖を感じたら逃げる、怒りを感じたら身を守る、嫌悪を感じたら距離を取る。これらは本来、命を守るために合理的な反応です。
しかし現代社会では、命の危険とは言えない場面でも感情システムが強く反応することがあります。人前で話すこと、失敗への不安、過去のつらい記憶などが、その代表例です。
こうした場面で起こる回避行動や確認行動、引きこもりなどが、感情駆動行動として問題になりやすいのです。
感情駆動行動の特徴
統一プロトコルでは、感情駆動行動に共通する特徴があると考えます。
まず一つ目は、短期的には感情が楽になることです。不安な場面から逃げると安心感が得られますし、嫌な話題を避けると心が落ち着きます。この「楽になる感覚」が、行動を繰り返す理由になります。
二つ目は、長期的には感情の問題を強めてしまう点です。回避を続けることで、「これは危険だ」「自分には対処できない」という学習が起こり、不安や恐怖がより広がっていきます。結果として生活範囲が狭まり、症状が慢性化することも少なくありません。
感情駆動行動がつくる悪循環
感情、思考、身体反応、行動は互いに影響し合っています。感情駆動行動は、この中で悪循環を維持・強化する役割を果たします。
不安を例にすると、不安を感じることで身体の緊張や動悸が起こり、「このままおかしくなるかもしれない」という考えが浮かびます。その不安から逃げたり確認したりすると、一時的に安心しますが、「逃げたから助かった」という学習が起こります。次に同じ状況に直面すると、さらに強い不安が生じるようになります。
統一プロトコルでは、この循環の中でも特に「行動」に焦点を当てることで、感情全体に変化をもたらそうとします。
統一プロトコルが感情駆動行動を重視する理由
統一プロトコルは、診断名よりも共通する心理プロセスに注目する治療法です。不安症、うつ病、PTSDなどは症状の表れ方は異なりますが、感情を避けようとする行動という点では共通しています。
不安を感じないようにする、悲しみを感じないようにする、怒りを抑え込む、恥を避ける。こうした行動が積み重なることで、感情との関係が硬直していきます。
UPでは、これらをまとめて感情駆動行動として捉え、診断を超えて対応できる枠組みを提供しています。
感情駆動行動を無理にやめないという考え方
統一プロトコルの特徴の一つは、感情駆動行動を力ずくでやめさせようとしない点です。感情駆動行動は、つらい感情から自分を守ろうとする精一杯の工夫であり、弱さの表れではありません。
大切なのは、感情に完全に支配される状態から、行動を選べる状態へと移行することです。そのために、まず自分の行動が感情によって動かされていることに気づくことが重視されます。
代替行動という視点
UPでは、感情を消すことを目標にしません。感情があるままでも選べる行動を増やすことを目指します。
不安を感じながらもその場に少しとどまる、恥ずかしさを抱えたまま短く発言する、悲しさを感じつつ人と会う。こうした行動は簡単ではありませんが、感情と行動の関係を柔らかくしていきます。
感情が落ち着いてから行動するのではなく、感情を抱えながら行動するという発想が、統一プロトコルの大きな特徴です。
感情との新しい付き合い方
感情駆動行動に気づくことは、感情をコントロールすることとは違います。感情を排除するのではなく、感情があっても人生を進められる感覚を育てていくことが目的です。
不快な感情も人間にとって自然なものであり、感情そのものが問題なのではありません。問題になるのは、感情を恐れ、避け続けることで生活が狭くなってしまうことです。
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