カウンセリング
自閉スペクトラム症(ASD)のフラッシュバックへの対応
自閉スペクトラム症(ASD)の方における「フラッシュバック」は、厳密にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)と関連する概念ですが、自閉症の人々も過去の辛い経験(たとえば感覚過敏による過負荷、いじめ、誤解によるトラブルなど)を繰り返し思い出し、身体反応や感情的反応を伴う「フラッシュバック様の体験」をすることがあります。ASDのフラッシュバックは、死を感じさせる体験ではなくとも、日常の生活でも起こりやすいものです。恥をかいた場面やゲームで負けてしまったことなどでも生じることがあります。フラッシュバックの対応については、薬物療法始め様々なものがありますが、なかなか定まったものはありません。まずは本人が安心できるような状況にしていくと言うことが大切になるかと思いますが、心理療法も貢献できる余地があります。
以下に、ASDのフラッシュバックへの対処方法と、適応する環境調整や心理療法について説明します。
自閉症のフラッシュバックの特徴
- 感覚過敏による過去の圧倒的な刺激経験の再体験
- 言語化が難しい場合が多く、身体的な反応やパニックとして現れる
- 自閉症の特性(ルーティンへのこだわり、感情表現の困難さなど)が処理をさらに難しくする
対処方法
1. 安心できる環境の確保
- 明るさ、音、匂いなどの感覚刺激を調整し、フラッシュバックを引き起こすトリガーを減らす
- 安心できる人や空間(例:自室、重みのある毛布、イヤーマフなど)を活用する
- 遊び(カードゲームなど)を通じて、体験的にコミュニケーションの楽しさを実感していく
2. 感覚調整ツールの使用
- 圧力刺激(加重ブランケット、抱き枕)
- センサリーツール(ハンドスピナー、タッチボール)
- ノイズキャンセリング機器
3. 呼吸法やグラウンディング
- 腹式呼吸や「今ここ」に注意を向けるマインドフルネス
- 5-4-3-2-1法(見えるもの5つ、聞こえる音4つ…)やグラウンディング技法
4. 信頼できる人との共有
- フラッシュバックの内容を詳細に言語化できなくても、「不安が強い」「体が動かない」など伝えられるよう、事前に合図や方法を決めておく
5.言語化する
- 不安が生じたり、癇癪を起こした際に支援者がそのことを言語化して伝える。「〜のことが心配なんだね」、「〜君の言葉で傷ついたんだね」
心理療法の適応と選択
1. EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)
- ASDの人にも効果を示す研究あり(ただし適応は慎重に)
- 非言語的処理が可能で、過去の記憶の情動反応を和らげる
- 感覚過敏やコミュニケーションの難しさを考慮し、セラピストが柔軟に対応する必要あり
2. ソマティック・エクスペリエンシング(SE)
- 身体感覚を通じてトラウマを処理するアプローチ
- 自閉症者の「言葉にしにくい感覚」や「身体の緊張」に着目できる
3. 認知行動療法(CBT)
- 自閉症者向けに構造化されたCBT(例:ビジュアルサポート、事例ベース)を用いる
- フラッシュバック後の誤った思考(例:「また同じことが起きる」)に働きかける
4. フラッシュテクニック
- EMDRの簡易版で、安全な方法で記憶を「そっと見る」ことができる
- ASDの方にも負担が少ないという報告がある(導入段階として有用)
セラピーを受ける際の配慮点
- 感覚過敏や過集中に配慮した環境づくり
- 支援者側がASDの特性への理解を持っていること
- 曖昧な言葉よりも明確な説明・構造化された進め方
- 支援者との信頼関係をゆっくり築く姿勢
以上思いつたり他の情報を元に記載しました。