カウンセリング
交通事故を経験した個人に対するEMDRフラッシュ・テクニックによるトラウマ症状、鬱、不穏、ストレス、生活の質に関するランダム化比較試験
交通事故を経験した個人に対するEMDRフラッシュ・テクニックによるトラウマ症状、鬱、不穏、ストレス、生活の質に関するランダム化比較試験
この研究はトルコで行われた交通事故に遭遇した対象者に対するEMDRフラッシュテクニックとmhGAPによる比較研究です。対象者は(a) 年齢が18歳から65歳までであること、(b) 6か月から10年前に交通事故に遭っていること、(c) 交通事故による器質的精神的症状がないこと、(d) 子ども時代の逆境体験質問のスコアが7未満であること、(e) 統合失調症や双極性障害などの精神疾患がないこと、(f) 重度の頭部外傷がないこと、(g) アプリケーションを実装する技術的能力を有していること、(h) 研究への参加を志願していることです。 対象者はグーグルフォームによって募集され、104人が登録しました。その中で研究対象とならなない、研究を望まない対象者、連絡が取れないなど環境的要因によって36人が除外され、残り68人をリサーチランダマイザーを使ってEMDRフラッシュテクニックグループとmhGAPグループに無作為に分けて比較をしていきました。実施はオンラインで行われました。
EMDRフラッシュテクニック
この研究では、EMDRフラッシュテクニックが採用されました。セッションの長さは60分から75分でした。グループの実施は3回のセッションで完了しています。最初のセッションでは15分間の紹介セッションが実施されます。トラウマ的な出来事についての議論はされず、グループの一体感を重視する内容となっています。次の15分ではEMDR療法が簡単に紹介され、特にフラッシュテクニックの技術的な詳細が紹介されています。このセッションでは、ポジティブな面の重要性、トラウマ記憶に関しては、可能な限り少なくしていること、オンラインで実施されるために画面に近づく必要があることなどを説明しています。参加者は、目撃した交通事故に関する不快とされる問題を5つ特定し、それぞれに焦点を当てたときに感じる主観的な苦痛の強さを0から10のスケールで評価することを求められました。その後に不快とされる問題とは別に安心した幸せな夢またはイメージを思い出すように求められます。両側性刺激を行いながら、ポジティブなイメージをイメージしていきます。適宜、瞬きを加え、この繰り返しを6回行いました。短い感覚で記憶の変化について質問し、苦痛がゼロになるまで続けていきます。
mhGAP
mhGAPはWHOがが開発したプログラムで、このモジュールではストレスおよびそれに関連する障害に対しての心理教育が実施されています。このセッションは55〜65分の3回で完了しています。
比較検討ツール
DASS-21 (うつ・不安・ストレス尺度)
IES-R (出来事インパクト尺度)
WHOOQOL―BREAF-TR(世界保健機構生活の質評価尺度)
結果
両グループの比較ではIES-R (出来事インパクト尺度)でEMDRフラッシュテクニック群の方が有意に低下していました(侵入と回避)。
DASS-21では不安項目でIES-R (出来事インパクト尺度)が有意に低くなっていました。
WHOOQOL―BREAF-TRでは心理面においてEMDRフラッシュテクニック群の方が優位に高くなりましたが、それ以外では特に有意差はありませんでした。
考察
サンプル数は少ないものの、IES―RがEMDRフラッシュテクニック群で有意に低下していることから、EMDR同様、両側性刺激がトラウマに対して有効であることが示唆されます。一方でフラッシュテクニックはトラウマ場面を最小限の想起にとどめており、被験者の苦痛を考慮した内容となっています。