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6.【書評】「うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル」ワークブック改定第2版 第5章「 感情を理解する」ビッドH.バーロウ

第5章は感情理解するです。目標としては
1 感情の大切さを知る 
2 感情を三要素(考え*身体感覚*行動)に分ける

 ここではまず感情について理解していきます。何かの症状がある場合に、感情はネガティブな評価となります。しかし、感情は自然に備わっているものであり、多くの場合生き残るために大切なものでもあります。これは感情についてどのような機能を果たしているかについて学んでいきます。

恐怖
 恐怖は、自然が与えてくれた警報システムです。恐怖は、私たちが危険にさらされているときに危険から身を守る対策をこうじる必要があることを知らせてくれます。例えば、道路を横断している時、あなたに向かってくる車に気づいたとします この状況ではほとんどの人は瞬時に恐怖を感じ、道路から飛び抜いて歩道に避けるでしょう。このように、恐怖は その場における危機的な状況を回避することができます。これは生き延びるためにおいて非常に重要なことです。

不安
 不安は未来に備える助けとなります。不安は、今置かれている状況が重大で危険な状態へとつながる可能性があることを知らせてくれます。危険につながりそうなあらゆるものに注意を向けるように促します。それにより、ネガティブな結果を防いだり減らしたりすることができます 例えば職場や学校での大事な発表の前に不安を感じるとしたら、この発表が重要なものだと知らせてくれます。発表での急なアクシデントにも対応できるように準備を促します。

悲しみ
 愛する人の心や別れ、やりがいのある仕事を失うなど、悲しみは自分にとって大切なものや人を失ったり、挫折した後に生じる自然な感情です。元の生活と実際の生活に大きな差があるととらえた時も悲しくなります。思い通りに仕事が進まない時や、大切な人とうまくいかない時にも悲しみを感じます。悲しみは体の重さ、だるさ、疲れといった身体感覚を伴います。また、悲しみは喪失や挫折を整理できるように、 一旦立ち止まる必要があることを知らせてくれます。例えば、恋人と別れた後に悲しみを感じることによって、その関係が大切なものであったことに気づきます。1人に戻って、何が問題だったのか、将来、他の誰かと新しく付き合っていくときに、何を大切にしたいいのかを整理する助けになるかもしれません。悲しみを一切感じたくないからといって、新しい関係にすぐに飛びついたなら、こうした事はわからないままになるかもしれません。悲しみはまた、自分を支え、慰めを必要としていることを他の人に知らせてくれます。人間は人との関わりの中で生きる社会的な動物です。立ち直るためには、誰かの助けが必要な時もあります。悲しみを表すと、自然と他の人を引き寄せます。悲しみという、一見すると「悪い」感情は、生きていく上でとても大切な働きをします。

怒り
 怒りは、自分や大切な人が何らかの形で不当な扱いを受けていると捉えたときの自然な感情です。大切な目標の達成を邪魔されたときにの怒りが起こります。この感情は、自分にとって大切な境界や縄張りが侵害されたことを警告し、何か手を打つように促します。例えば、電話会社が使っていないサービスの追加料金を何ヶ月分も突然に請求してきて、「すぐに支払わないとサービスを止める」と言ったとします。この状況での怒りは、公正ではないことが起こっていることを知らせてくれています。この怒りによって、あなたはおそらく、問い合わせ窓口に請求を取り消すように伝えようと思うでしょう。怒りを感じ、それをもとに行動を起こすことで、あなたが不満を持っている、不当に扱われていると言うことを周りの人に伝える役目も果たします。怒りは、怒鳴ったり物を壊したりするなどの破壊的な行動を伴うことがあるため、あまりよく思われていません。ここで重要なのは、「怒りの行動と怒りの感情を分けて捉える」ことです。怒りが生じたときに、その怒りに注意を向ける事はとても大切です。自分自身を守る行動を起こす必要性をといかけているのですから。しかし、怒りを感じたから、といって、破壊的な行動しなければならないわけではありません。

罪悪感/恥
 罪悪感と恥は自分が設定した何らかの基準を満たせなかったときに生じます。罪悪感は、何らかの形で社会の期待に背いたと捉えたときに起こる自然な反応です。例えば、友人に借りたお金を返し損ねたとします。罪悪感が生じれば、友人に謝罪してお金を渡すでしょう。恥は、自分なりに基準に届くことができず、「自分には価値がない」と考えたときに生じます。例えば、お金がないために 友人に返済できないときには恥を感じるでしょう。悲しみと同じく、恥ずかしさは他者から遠ざかる行動を促します。一旦他者から遠ざかることで、今後、自分をどう変えていけば良いのかを考える機会を与えてくれるでしょう。どちらの場合も、これらの感情は人を有益な行動へと向かわせます。 罪悪感は感謝することによって重要な関係を維持する助けとなり、端は懸命な努力を促すことによって、将来的に行動改善させていく助けとなります。

ポジティブ感情 
 嬉しい、楽しい、気持ちいい、幸せ、興奮、誇りといったポジティブな感情もまた重要な情報を伝えてくれます。ポジティブ感情は、自分が人生において何を大切にしているのか、どのように時間を使いたいと思っているのかを教えてくれます。例えば、とても楽しい趣味を新たに見つけたとすると、あなたはどうするでしょうか?きっと、それをやり続けるでしょう!しかし、人は、時にポジティブ感情が過ぎ去ると余計に気分が落ち込むのではないかと心配して、こうした感情を避けようとすることがあります。あるいは、心をおどらせることのないように、あらかじめ抑え込むこともあります。と言うのは、もし期待していたのに、うまくいかなかったら、余計に がっかりして傷つくだろうと心配するからです。うつ病の人は、人との付き合いといったポジティブな体験を避けがちになります。これは、ポジティブな体験を以前ほど楽しめない自分に直面して、それが辛いはずだと予想するためです。ポジティブ感情がなければ、私たちは人生において進む方向がわからず、自分が何を大切にしているかもわからず、どう生きたいいのかもわからなくなってしまうでしょう。大切なのは、ネガティブでもポジティブでも、あらゆる感情をひとまずは受け入れることです。どのようにして、ポジティブな感情を大切にしていけるか試していきます。
 
 以上のように、このプログラムでは、感情は生活をするにおいて非常に重要で大切であるということを学びます。従来のプログラムでは 感情についてネガティブなものとして対応していた傾向があります。しかし、このプログラムで 感情を生活として非常に重要なものととして捉え、そのことについて学習する機会を与えています。こうした理解をした上で、 生活上、支障生じている問題について考えていくようにしています。 この点については、うつ病特有の反すうに焦点を当てた 認知行動療法でも同様の手法が用いられています。すなわち、反すうは大切で意味があると言うことを学ぶ機会を設けていることです。