コラム
⑤【書評】「礼儀正しさはどんな場面でも通用する」自閉症スペクトラム障害のある人が才能をいかすための人間関係10のルール テンプル・グランディン ショーン・バロン著
「人に礼を尽くしマナーを守ることは、集団での交流への入場券である」と最初に著者は主張しています。人それぞれに思考や感情や行動の違いがあると認めつつも集団の指針が必要であることを受け入れるという認識を自閉スペクトラム症のある人は理解しづらいといいます。このテーマでは人間関係の感情的基盤の理解よりも行動修正に力点が置かれています。その行動修正をするには、知識が必要で、大人向けのマナーや社交術本、あるいはホームページ上にもたくさんあると主張しています。実行できる最初のテーマとしては、「どうぞ」「ありがとう」「ごめんなさい」ということ、そして順番を守る、妥協するなどが含まれます。著者によると、行動面と感情的理解の二つを同時に教えようとするとひどく混乱することがあり、そこでソーシャルスキルを体系化して教えた方が何がよい行動で何が悪い行動であるかが理解しやすいといいます。マナーに関してはあらゆる場面での介入が必要とし、年上への敬語の使い方、食事の作法などを含んでいます。ただマナーを学ぶのは退屈な作業であるため、マンガや映画、ドラマなどの活用をあげています。またマナーにありようは人格ではなく行動に焦点をあてるほうがよいとしています。「あなたは失礼です」よりも「失礼は行動です」と教えます。また不適切なマナーについては、機能的な部分があることから、それを理解した上で修正をはかると効果的としています。すぐに手をあげる子は自己主張をしたいのかもしれません。それを理解した上で順番に従うといった具合かと思います。大人になるにつれてマナーを複雑化していくので、マナーについては「いつ、どこで、誰にたいして」を適応するかを教えることも重要としています。